日本給食業経営総合研究所の野間です。昨今皆さまも良く耳にするキーワード、そして取り組みを始められている給食業もいらっしゃるとおもいますが、今回は全国の給食業においてSDGsにおける認知と取組の実態についてお話させていただきます。
「SDGs」に積極的に取り組んでいる給食業は「ごく少数」
日本給食業経営総合研究所は給食業に専門特化したコンサルティングを行っており、また給食業経営者の会員組織を運営しています。したがって給食業関連業種とのネットワークも含め、全国給食業の経営の取り組み状況が把握できる状況にあります。日本給食業経営総合研究所のお付き合い先は、非常に前向きに取り組む企業様ばかりですが、「SDGs」が経営支援のテーマになる機会はほとんどないというのが実態です。
その背景には、飲食業ほどではありませんが、多くの給食会社ではコロナの影響を受けており、「SDGsは業績に直結しない」「SDGsどころではない」という経営者様が多い状況です。またそもそも「SDGs」を聞いたことはあるが、内容について良くわかっていない経営者様が圧倒的多数です。このような現状が、SDGsが議論の場を増やす足かせになり、結果ビジネスに繋げていく発想そのものが産まれていないのです。
現実として、2020年の数字ではありますが、「中小企業の約50%はSDGsを認知しておらず」、また、「90%以上がSDGsに対する取り組みを行っていない」という調査結果も出ています。
<参考>一般社団法人日本立地センター(中小企業500社に対する「SDGsの認知度調査」)
給食業でSDGsを広げていくには、まず「絞り込んだテーマの提示」が必要
「SDGs」には「17のテーマ」が設定されており、その内容は多様でテーマごとにターゲットゴールが定義されています。
SDGsを給食業界で広げていくには、給食業経営者からの「どのテーマが自社にとって取り組みやすいか」「それは商売にどう関係するか」というシンプルな問いに対して、明確な成功事例をもって表現することができるかが重要となります。現状では、「意識の高い給食業経営者だけが取り組み、スーツのラペルにSDGsのバッチをつけるという域を出ない」と私は感じています。
例えば、SDGsのテーマ12の「つくる責任 つかう責任」には、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。/ 2030年までに廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により廃棄物の発生を大幅に削減する。」というゴールなどが含まれています。
つまり「ロスを減らす」テーマに取り組む企業であることが、SDGsに賛同する企業ということになります。
「ロスを減らすために何をすればいいのか?」
「ロスになりそうなものを再利用するにはどうすればいいのか?」
給食業において、これらは「元来経営の重要事項として取り組んでいること」です。したがって、各社ともホームページを含めて自社がSDGsに取り組んでいることを表現することは今すぐにできるのですが、そういった給食会社は少数なのです。
理由は、繰り返しになりますが、「知らない」「関心がない」「メリットを知らない」が根本的な要因です。(ちなみにロゴの利用については、「資金調達目的」・「商業用途(SDGsのロゴをつけたものを販売するなど)」以外は、申請や許可は必要ありません。)
給食業が「SDGsに取り組むメリット」
「今まで実施してきたことに「新たな大儀」が生まれる」
従業員の中にSDGsに対する感度の高い人がいれば(感度を高める取り組みをすることを前提に)、仕事へのモチベーションが上がるという期待です。例えば、今までやっていたロス対策に対する姿勢・見方が変わる人もいるかもしれません。廃棄されるはずのものを子ども食堂に提供するなどの発想も、従業員の中から出てくるかもしれません。このように「現時点で実施していることの先にある価値」を再認識する風土になる可能性を秘めている点が、現実に起こりうる、最も身近で大きなメリットかと思います。
経営者で99.9%決まる
企業は99.9%経営者によって決まります。全ての企業活動の結果は、経営者の意思決定で行われているからです。(細部に関与する・関与しないという意思決定も含めて)SDGsへの取り組みも同様で、経営者自体が関心を持つことが良い結果に結びつけるスタートラインです。
ぜひ「今やっていること」と「SDGs」を紐づけて、自社の風土作り・自社のブランディング・同じ価値観を持つ関係者作りを進めてみてはいかがでしょうか。