
株式会社日本給食業経営総合研究所(日給研)副代表の井上裕基です。
今回は異業種企業から学ぶ「給食業の経営」についてお話したいと思います。
給食業は「人が集まりにくい」と言われる業界です。食のインフラでありつつも、人手不足・そして社会的な認知や注目度にはまだこれからの課題が多いのが実態です。これらは給食業に限った話ではなく、他の業界にも共通します。今回は、同じく「人が集まらない」「斜陽産業」と呼ばれる牛乳宅配業の中で、10年で売上・従業員数を7倍に伸ばし注目を集める株式会社明治クッカー様の事例をもとに、給食業界が学ぶべきヒントを追っていきましょう。
目次
【誰も入りたがらない牛乳屋の再生ストーリー】
明治クッカー様は、千葉県で明治乳業の特約店として3店舗を構え、個人宅や事業所への牛乳やヨーグルト等宅配を行う地域密着型の企業です。パート・アルバイトを含めた従業員は約70名。「誰も入りたがらない牛乳屋」と言われた時代、当時30歳だった西原社長が家業を承継したことが再生のスタートでした。引き継ぎ当初、西原社長は「真っ先に会社をたたむことを考えた」といいます。それほどまでに、将来性のない業界であったということです。しかし、現場を観察し、外部の視点から業務を見直し、変革のヒントを探しました。これはまさに、給食業界にも重要な視点ではないでしょうか。
【強みの再発見とブランディング戦略】
明治クッカー様が実践したのは、自社の「対面配達」という強みの再定義です。単なる配送ではなく、高齢化社会の中での見守り、地域密着の生活支援インフラという側面に着目し、事業を再設計しました。SNSを活用したブランディングによって、単なる“牛乳屋”ではなく「ライフパートナー」という立ち位置を築いたのです。給食業もまた、毎日の食を届けるという点では、顧客と深く関わるサービス業です。顔が見えるサービス、体調やライフスタイルに寄り添う提案力など、明治クッカー様のアプローチはそのまま給食業にも応用できる部分が多く存在します。
【改革に立ちはだかる壁とその乗り越え方】
改革には常に反発が伴います。新しい仕組みを導入すれば顧客の離反も起こり得ます。西原社長はそれを「痛み」として覚悟したうえで、継続的な改善に努められました。特に注目すべきは、70代のスタッフでも使いこなせるDX(デジタルトランスフォーメーション)を導入し、業務の可視化・効率化を実現した点です。
給食業界でも、人材の高齢化やアナログ管理の課題を抱えている企業は多いです。「高齢者でも使える」ことを前提にしたDX設計は、そのまま導入のハードルを下げることにもつながります。
【学び合い育て合う文化の構築】
また、明治クッカー様では社内勉強会を定例的に開催し、従業員の育成にも注力されています。「牛乳を届けるだけ」の仕事から、「生活のお困りごとを解決するサービス業」への進化。その土台には、従業員一人ひとりの意識改革がありました。給食業界でも、現場スタッフの育成は企業の未来を左右する最重要課題です。単なる作業・仕事ではなく、お客様の声に耳を傾け、健康や生活のアドバイザーとして活躍する人材育成が求められます。
【牛乳屋ができるなら給食業でできないはずがない】
西原社長の言葉には、給食業界に刺さるものが多数ありました。将来性がないと思われていた業界で、新たな価値を見出し、結果を出す明治クッカー様の実践には、給食業界を盛り上げるヒントが数多く詰まっています。大切なのは、「変われる」と信じること。そして、未だ見えていない強みを再定義し、磨き続けることです。
こうした明治クッカー様の取り組みを、より深く・直接学べる貴重な機会として、【2025年7月12日(土)】に東京・新橋にて特別セミナーを開催いたします。当日は、西原社長ご本人にご登壇いただき、事業承継時の葛藤と再起のストーリーや自社の強みをどう再定義したか、改善への反発と顧客対応、牛乳宅配業からサービス業への転換など、実践に基づく具体的なノウハウを余すことなくご紹介いただきます。
給食業に未来を感じたい方、変革のヒントを掴みたい方はぜひご参加ください!皆さまとお会いできることを楽しみにしています!


