株式会社日本給食業経営総合研究所(日給研)副代表の井上裕基です。
2025年2月6日(木)東京ビッグサイトにて開催された第46回フードケータリングショーにて「弁当・食堂・委託・完調品業態の勝ち筋 2025年、勝ち残る給食会社が取り組む業績アップ事例」と題し講演をさせていただきました。今回は、当日私がお話した内容をポイント絞ってご紹介したいと思います。
私たち給食業界は「とまることも、とめることもできない」食のインフラ業です。しかしながら、世間からの評価や認識がとても低いことを感じます。その影響が大きいのか、従事している方からもその意識が弱く、自己肯定できていない実態を痛感しています。
2025年、給食業界の価値と値段を上げる取り組みが一層重要になると考えます。そのためにも、価値を上げなければ値段は上げられないことにも目を向けなければなりません。
【売上=客数×客単価×購買頻度】
給食業の売上公式として一般的な考え方ですが、給食業界は「客数」を増やすことが得意で奔走してきた背景があります。同時に、給食業は基本毎日利用のため「購買頻度」をあまり気にしてこなかった。そこで今重要なのは「客単価」です。客単価にメスを入れた事例は非常に少ないのが実態です。単価が上がらない背景に、我々が提供する価値をお客様に価値と思ってもらえていないことが大きな問題です。私は、この客単価を「価値と表裏一体の関係」であると考えています。
一体どのようにして、価値を上げられるのか。簡単ではありませんが、価値を上げれば(価値を価値と理解してもらえれば)価格を上げられます。そのために必要な視点は次の通りです。
【①ビジネスモデルの見直し】
アップセル提案(例:高単価特別弁当の企画販売、スマートミールを一例とした「上」のプラン
【②設定価格の見直し(改善)】
1~2食でも昔からの価格で据え
置いているケース、無償サービス品の継続、有って無いような定価という概念、といった業界特有の常識を一掃させること。
【③ネガティブな固定概念の打破】
「どうせウチなんて」「給食会社じゃ絶対できない」といった先入観や低い自己評価、潜在的なネガティブイメージを少しずつでも薄めていくこと。
手法論として割り切って推進できる①②に対して、私は特に③を根本的に改善すべきだと思っています。
それらを改善するために、
・提供する価値を定義し、それを基準に価格を決める
・仲間や仕入れ先が幸せになるかを判断軸にする
・市場・相場をもう一回我々で創り上げる
「他に比べるとちょっと高い方が…良さそう!」
と言われるようになることがポイントです。
業績を伸ばす手法を突き詰めることも大事な一方、今必要なことは業界認知と価値を上げる取り組みということは言うまでもありません。企業として、こういった意識や取り組みを推進していく仕組みが一層必要になったのだと感じます。
コロナ禍から物価高騰と非常に厳しい局面を迎える給食業界ですが、「なくてはならないもの」を提供する我々は底堅い特徴を持っていることを改めて認識することが大切です。例えば「高齢者」を代表するようなターゲット数が成長する市場を保有する給食業界には、明るい方向性を未だ感じられる余地はあります。一方で、市場を構成する「単価」を上げることができれば、給食業界はまだまだ伸びるわけです。
前述した通り、私たちに今必要なことは「給食業界の価値と値段を上げること」。2025年以降を給食業界の皆さまとともにぜひ戦っていければと思います。今回もお読みいただき、ありがとうございました。