いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
日本給食業経営総合研究所 給食業経営コンサルタントの宮崎です。
今回は、2021年コロナ禍でも業績を伸ばす給食会社の共通点について、お話いたします。
先行き見えないコロナ禍で給食業はどうなるのか?
コロナウイルス感染拡大の影響がいつまで続くのか、2021年も先が見えない情勢は変わらず続きます。エリアによって続く緊急事態宣言、どの業界もコロナウイルスの影響を受け続けていますが、給食業における2020年度の業績着地を見れば業績推移は5~10%の微減で留まる結果となりました。
これは給食業が「食のインフラ」を支える重要な事業であることと同時に、ストック型の事業である強みを再確認できたと冷静に判断できます。特にコロナ禍で業績維持・向上させた給食業は、この情勢の中で「攻めた」企業です。
良くある間違いに、「止まること」と「守りを強化する」ことを同一に考えることが挙げられます。コロナ禍においては、止まることは衰退を意味し、事実業績を伸ばすためには攻めるしかないのです。
「攻める」給食会社であり続けるために
①「攻め」の手法の種類を知る
顧客拡大の手法として、給食業界では長らく訪問営業が主流でした。コロナ禍では、新規営業に制約が生まれています。いわゆるPULL型マーケティング(WEB・FAXDM・テレアポ・DM等)による欲しいと想っている顧客層へのダイレクトマーケティングや潜在顧客の創出機会は必須です。これを整備してきた給食会社はスムーズに攻めることができ、そうでない給食会社はどうしてもスピード感に課題が出てしまいます。
また即時営業するために、オンラインでの手法(オンライン商談/メルマガ/SNS等)を導入できているかもポイントです。
北関東エリアの給食会社様では、月に約2万円のコストでFAXDMを4,000通配信し、134食の継続利用を獲得されるなど、攻め続けることで食数をしっかりと増やされています。
他社事例・最新経営情報を把握する
コロナ禍では業績を維持させることを目的にしては危険です。むしろ伸ばし続けるためにどうすれば良いかを念頭に、販促・営業を実践しなければなりません。その結果の善し悪し、妥当性を図るための効果検証が自社で出来ているでしょうか。
ただ闇雲に営業や販促を実施するのではなく、コストに対する顧客獲得結果を検証しなければいずれ崩れてしまいます。例えば前述したFAXDM、自社での費用対効果検証は勿論ですが、給食業界での基準や他社事例と比べる機会を持つことが重要です。その数値と比べることで、以降の経営判断はより容易に、精度が上がります。全国の最新他社事例を得る機会を活用し、それを自社に落とし込んで実践・改善することが、攻めの「強さ」と「速さ」を格段に上げる秘訣なのです。
新しい生活様式による消費者ニーズ・競合の変化を掴み切れていますでしょうか。経営者が迷いなく攻めるために、伸びていく市場・分野なのか?という観点もポイントです。
コロナ禍での個人消費は、外食から中食・内食に大きく変動し、飲食店も次々とテイクアウト事業を付加させる等フードサービスの在り方が大きく変化しました。給食業界でも、弊社調査では在宅向けの個人配食に取り組んでいた給食会社の半分以上が昨年対比105%以上の売上推移を見せています。巣ごもり需要や在宅ニーズの高まりがわかる、実態の一つです。
そんな内食・中食の需要増に伴いコロナ前と比べニーズが広がっているのが、従来の商品よりも長期保存が可能な冷凍食材・冷凍弁当です。先行して冷凍総菜の販売をしていた給食会社は、第一回目の緊急事態宣言以降業績を伸ばし昨対比2~3倍年商見込みにまで拡大させています。個人消費だけに留まるものではなく、事業所向けの福利厚生(惣菜・弁当)や介護施設向けの給食等でも保存が効く冷凍惣菜や冷凍弁当は以前にも増して台頭してきています。
給食業における「守り」で大事になる視点
景気が傾いている状況においては、限られた購買機会を無駄にしないために個人の消費はより慎重になり、一番商品に集まります。コロナ禍だからこそ、固定客化をより強固にするために、商品力強化・見直しの絶好のタイミングであるわけです。
一口に商品力といっても、万人受けする味の判断は個人差もあり非常に困難です。数値化が難しいお弁当・惣菜の商品力を量・数・幅・質の4つに分類され、各項目において定量的・定性的にチェックすることで商品力を客観的に把握することが可能となります。より多くの方に選ばれる商品を展開するため「攻め」と同様、客観的に比較するための情報がある企業は判断軸がより正確になります。
給食会社がコロナ禍を勝ち抜くために、最新の業界経営情報や他社事例をタイムリーに取得し、自社に合った「攻め=販売促進」と「守り=体制強化・商品力見直し」をバランスよく実践していただくことが一層求められる時代となりました。