コロナ禍を経て需要が高まっている給食業界ですが、解決しなければいけない課題が散見されているのも事実です。
この記事では、以下の内容を解説しています。
- 給食業界の現状やトピック
- 給食業界の課題とは?
- 給食業界の課題解決策5選
現在の課題と解決策を正しく知ることが、今後の給食業界と企業の成長につながります。
ぜひ最後までご覧いただき、次のアクションを明確にしましょう。
1.給食業界の現状やトピック
まずは、給食業界の現状やトピックとして以下の2点をご紹介します。
- 全体的なコストの高騰
- 保育施設や高齢者施設の増加に伴う需要増
一つずつ見ていきましょう。
1-1.全体的なコストの高騰
給食業界では、以下のような要因から食材費や光熱費、人件費などが大幅に上昇しています。
- 2022年から始まったロシアのウクライナ侵攻
- 石油価格の高騰
- 歴史的な円安
特に食材費の高騰は深刻で、提供する給食の値上げを余儀なくされる状況が続いています。
販売価格が低いながらも原価率40%前後をかけている給食業界ではコストの高騰は大きな負担となっており、企業経営を圧迫する最大要因となっています。
加えて毎年30円程の最低賃金の値上げが続いており、時給が1500円、2,000円になる未来もすぐそこにあります。
1-2.保育施設や高齢者施設の増加に伴う需要増
一方で、給食業界の需要は増加傾向にあります。保育施設や高齢化施設の増加が主な背景です。
保育所では、園内調理による給食提供が一般的になっており、共働き世帯の増加による保育所の増加は、給食需要の拡大に寄与しています。また、高齢化社会に伴う病院や介護施設などの給食需要増加も、給食業界にとって大きな影響をもたらしています。
2.給食業界の課題とは?
上記トレンドを踏まえた給食業界の課題として、以下の5点が挙げられます。
- 人材不足が長期化している
- FLコストが増加している
- 食材コストや供給が不安定でも提供を止められない
- HACCPへの対応が必要
- 競合との差別化が難しい
それぞれ解説していきます。
2-1.課題①人材不足が長期化している
給食業界では、人手不足が深刻な課題となっています。給食業の現場はまだまだアナログな部分が多く、更に早朝勤務の就業形式も多いことから、若年層の就業意欲が低下してしまっているのです。
また、業界の給与水準が高くないこともあり、栄養士や調理師などの有資格者が離職してしまうなど、人材の確保と定着が難しい状況にあります。
さらに、経営の後継者不足も深刻です。日本給食業経営総合研究所の調査では、給食会社の2割しか後継者が決まっていないのが実情です。現場の業務に追われ後継者候補の育成ができていないことや、業績不振から事業を継ぐ意欲が低いことが原因と考えられます。
2-2.課題②FLコストが増加している
前述したように、給食業界では、食材価格や人件費・光熱費などのFLコスト大幅に上昇しています。2022年のウクライナ情勢や為替変動の影響が主な要因です。
※FLコストとは、Food(食材費)とLabor(人件費)のことを指します。
元々薄利多売で利益幅が低い給食業にとって、コスト増加は収益性の悪化に直結します。コスト管理と提供品質のバランスを取ることが、給食業界の大きな経営課題となっているのが現状です。
2-3.課題③食材コストや供給が不安定でも提供を止められない
食材費高騰が続き、給食業では従来の価格で販売し続けられる価格の食材や供給量を確保することが難しくなってきているのも事実です。
たとえば直近では、新潟や秋田など主要なお米の産地で、日照不足や夏の猛暑などが影響し、お米の収穫量が減ったり、猛暑の影響で品質にも影響が出ています。その結果お米が高騰し、全国レベルで影響が出ているのです。
給食業は食のインフラであり、供給を止めることや食材を変更することが難しい場面も多くあります。、食材供給や価格が不安定な状況でも供給先である学校給食や介護施設などでは、栄養バランスや調理状況など、細かな要素を考慮した献立管理が必要となっています。
2-4.課題④HACCPへの対応が必要
HACCPは、2020年から食品業界全体で義務化された衛生を管理する国際的な手法です。2021年6月以降は完全義務化されており、給食業界でも、徹底した衛生管理が求められています。
HACCPでは、より高度な衛生管理をおこない、第三者機関による認証取得が求められます。食の安全性が最優先課題となる給食業界にとって、HACCPへの対応は喫緊の課題といえるでしょう。
2-5.課題⑤競合との差別化が難しい
産業弁当・社員食堂事業において、本来であれば商品内容やサービスで差別化をしていくべきです。しかし毎日のお食事への予算が限られているケースが多く、その予算の中でしか差別化を出来ないとなると各社大きな差が出せているかというのは不明瞭です。
特に学校給食や介護給食などの事業では栄養バランスやコストが厳密に定められています。、提供サービスの自由度が低く、差別化が難しい中で価格でしか差別化を出来ない企業が増えています。
3.給食業界の課題解決策5選
昨今の給食業界の課題解決策として、5つの方法を解説していきます。
- 労働環境や業務効率をITを使って改善する
- 顧客との信頼関係を構築する
- HACCPに基づいた衛生管理を構築する
- 自社のサービスを発信する
- 「M&A」を活用する
これらは業績が好転している・伸びている企業の特徴です。一つずつ解説します。
3-1.労働環境や業務効率をITを使って改善する
給食業界の人材確保には、労働環境及び業務効率の改善を図ることが必要不可欠です。
給食業界の課題である在庫管理や献立管理の煩雑さに対しては、給食業界向けのITツール導入が効果的です。
ITツールは、在庫の自動管理や、実績データの集計機能、異常値の検知機能などが備わっており、人為的なミスを減らして業務の効率化を図ることができます。
結果として、営業活動や事業分析など本来の業務に時間を割けるようになり、業績向上のための行動にリソースを避けるようになります。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 煩雑な事務作業や管理業務をシステム化し、効率化する
- 献立作成ソフトウェアなどのITツールを導入する
- ペーパーレス化を進め、作業の省力化を図る
これらの業務効率化策は、体力を要する現場の負担を軽減するだけでなく、無駄なコストの削減にもつながります。最終的には、従業員の待遇改善や採用の強化にもつながる重要な取り組みです。
3-2.顧客との信頼関係を構築する
給食業界では、学校や介護施設などの顧客との信頼関係が非常に重要です。
2023年9月、広島市や静岡市の学校や施設を中心に、給食の提供が突然止まるという事態がおきました。広島市に本社を置く株式会社ホーユーの経営悪化が主な要因です。このとき、株式会社ホーユーは行政に対して自社の経営難を相談しておらず、適正な価格交渉やコンペティションへの値入が出来ていませんでした。
参考:給食ビジネスモデル崩壊 最終赤字3割、値上げ難しく – 日本経済新聞
「ファストフードやレストランなどよりも価格が安い」という印象の強い給食は、値上げ交渉が難しいという現実があります。そこで重要なのが、顧客と給食会社の信頼関係です。
自社のサービス向上と顧客に合わせた柔軟な対応によって信頼関係を強め、適正な取引をおこなう状況を作り上げなければなりません。そのために欠かせないのは他社とは差別化された商品の磨きこみであり、以下のような要素が欠かせません。
- HACCPなどの取得がなされて安全面が担保された工場である
- 商品力(量数幅質の4要素)の定義がなされて下限品質が強化されている
- 選択と集中・単品特化と生産性の追及
3-3.HACCPに基づいた衛生管理を構築する
2021年6月より、食品業界全体でHACCPによる衛生管理が完全義務化されたことを受け、給食業界でもHACCPに沿った運用体制の構築が喫緊の課題となっています。
HACCPに基づいた運用体制は、定められた「7原則12手順」に対応する必要があり、全社一丸となって取り組むことが重要です。これには時間を要するため、早期の対応が求められています。
また、事業規模の拡大に向けてより高く売れる市場への進出を検討する企業が増えており、地域特化の地場給食業から海外輸出への展開も進んでいます。輸出には国際基準の衛生管理が必須となるので、より一層幅広い視野を持った衛生管理が求められます。
3-4.自社のサービスを発信する
自社のサービスを積極的に発信していくことも、給食会社の業績を改善するために大切です。
給食業では以前から自社をPRすることに苦手意識があるケースが多く、「伝える」行動量と質が欠けているケースがございます。
ここでは、「食べてもらう機会(試食会)の数を増やす」「Web対策を強化する」という2つの自社サービス発信方法をご紹介します。
3-4-1.食べてもらう機会(試食会)の数を増やす
契約数を増やすためには、まずは自社の味を知ってもらう機会を増やすことが重要です。顧客となる事業所、学校や介護施設、病院などの関係者に自社味を確認してもらえれば、サービスや食事の品質の高さを必ず理解してもらえる!というところまで商品開発レベルを上げるべきです。
そのためのマーケティングは訪問・ダイレクトメール・FAXなどの手法はもちろん、HPの強化・SNSの活用・セミナーの開催など年々複合化してきています。
3-4-2.Web対策を強化する
給食業界においても、ウェブを活用した情報発信の重要性が高まってきています。WebサイトのSEO対策やSNSを活用することで、自社の特徴や実績、提供するサービスの魅力を、広く訴求できるようになります。
特に、顧客となる学校や介護施設、病院などが求める情報を、ウェブ上で積極的に発信していくことが重要です。そうすることで、自社の強みを効果的に伝えることができ、新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
3-5.「M&A」を活用する
様々な解決方法の中の一つの選択肢としてM&Aを検討するケースも増えています。M&Aとは企業同士の合併・買収のことですが、、給食業界ではM&Aの動きが活発化しています。
給食会社のM&Aによって、買い手と売り手にそれぞれ以下のようなメリットが生まれるためです。
売り手のメリット | ・取引や雇用契約を継続できる ・将来性に対する不安を払拭できる ・後継者探しの手間をなくせる |
買い手のメリット | ・コスト・賃金を削減できる ・売り手の顧客を獲得できる ・人手不足を解消できる |
M&Aを効果的に進めることで、給食業界の人手不足やコストの増加といった課題の解決につながるでしょう。
日本給食業経営総合研究所では、給食会社・給食業のM&Aをサポートしています。詳しくは給食業の事業承継・M&Aのページをご覧ください。
4.日本給食業経営総合研究所が給食会社の課題解決に貢献します
日本給食業経営総合研究所は、給食業界に専門特化したコンサルティングサービスを提供しており、給食会社の業績改善にも数多く携わってきました。
「給食の値上げをしたい」「新規顧客を増やしたい」「離脱客を減らしたい」などさまざまなお悩みに対し、現状の企業分析と給食業界の最新動向をもとにした最適な経営方針のご提案が可能です。
業績を上げたい、自社の課題を解決したいとお考えの給食会社様は、ぜひ一度日本給食業経営総合研究所へご相談ください。
給食業の売上・粗利を増やしたい | 日本給食業経営総合研究所
5.まとめ
給食業界は、業界全体で以下のような課題を抱えています。
- 人材が不足している
- 運営コストが増加している
- 在庫や献立の管理が煩雑になる
- HACCPへの対応が必要
- 競合との差別化が難しい
これらの課題による影響で、赤字や倒産を余儀なくされている給食会社が増えているのが現実です。これらの課題を解決するためには、M&Aの活用や、労働環境・業務効率の改善、顧客との信頼関係構築など、次なるアクションを起こす必要があります。
給食会社の方で経営課題を抱えている方は、ぜひこの記事でご紹介した課題解決策を参考にしてみてください。
日本給食業経営総合研究所では、その経験と給食業界に専門特化しているという強みを活かして、あなたのビジネスを支援します。給食業務に関するお悩みをお持ちの方は、「日本唯一の」給食業専門総合コンサルティング会社である日本給食業経営総合研究所にぜひご相談ください。