国民医療費抑制のために、診療報酬の改訂をはじめとした施策が政府主導で進められています。そんななか、経費を抑えつつも質の高い医療サービスの提供が求められているのが、各地の病院です。
病院では、経費削減によって赤字を最小限にしつつ、生産性向上の取り組みが求められるようになっています。
そこでこの記事では、「病院経営で経費・コスト削減をする必要性や背景」から「病院の経費削減の方法や意識するポイント」について、徹底解説していきます。
病院の経費削減をお考えの担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.病院経営で経費・コスト削減をする必要性や背景
まずは、病院経営で経費削減をする必要性や背景について解説していきます。
- 以前より必要経費が増加している
- 病院の収入が減少している
上記の2点についてそれぞれ見ていきましょう。
1-1.以前より必要経費が増加している
近年、病院の運営コストは大幅に増加しています。これは、最新の医療技術や設備の導入が必要とされる一方で、医療材料の価格上昇や人件費の増加が続いているためです。
高度な医療機器の導入には莫大な投資が必要であり、これらの機器の維持管理にも相応の費用がかかります。
さらに、医療従事者の資格を持つ専門職への適正な報酬を確保するためにも、人件費が増加しています。
1-2.病院の収入が減少している
病院の主要な収入源は、患者からの医療費や保険からの診療報酬ですが、近年その診療報酬による病院収入が減少しています。診療報酬の改定により、特定の治療や手続きの報酬が低下したことが一因です。
さらに、病院患者数の減少も収入減に直結しています。2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行による外来患者数の減少は、特に顕著です。
以上のことから、病院は運営の効率化やコスト削減を余儀なくされており、財務状況の改善が急務となっています。
2.病院経営で発生するコストの種類
病院経営で発生するコストは、主に以下の5種類に分けられます。
- 人件費
- 医薬品や給食などの材料費
- 外部委託費
- 諸経費
- 減価償却費
それぞれみていきましょう。
2-1.人件費
病院における人件費では、通常の企業同様に給与や賞与、法定福利費の見直しを含みます。病院経営において大部分を占めていますが、人件費関連の削減や見直しは最終手段として考えてください。人件費関連の削減は、現場からの反発を生み、さらなる経営課題が発生するリスクが高いためです。
まずは労働生産性を向上させ、同時に、適切な人事評価制度を導入することで、モチベーションの維持とコストパフォーマンスの向上を目指すことができます。
2-2.医薬品や給食などの材料費
材料費には、以下のようなものが含まれます。
- 医薬品や消耗品・備品費
- 診療材料費
- 給食材料費
このなかでも、医薬品や診療材料の購入費用が大部分を占めています。
2-3.外部委託費
外部委託費には、各種清掃や警備、給食サービス、検査などの委託費用が含まれます。
2-4.諸経費
経費は項目数が多く、たとえば以下のようなものが経費に含まれます。
- 車両や医療機器のレンタル費
- 福利厚生費
- 通信費
- 広告宣伝費
- 消耗品費
- 消耗器具備品費
- 交際費
- 雑費
病院経営に対する一つ一つの影響度は少なくとも、方法次第では大きなコスト削減につながる可能性があります。
2-5.減価償却費
減価償却費には、以下のような項目が含まれます。
- 建物の設備投資
- 医療機器の設備投資
- 情報システム
減価償却費においては、建物や医療機器の保守管理により、寿命を延ばし、償却期間を適切に設定することが重要です。
3.病院における種類別のコスト構造
ここからは、以下3種類別に病院におけるコスト構造を解説していきます。
- 一般病院
- 療養型病院
- 精神科病院
詳しく解説します。
3-1.一般病院のコスト構造
一般病院の医業収益に対するそれぞれのコストの割合は、次のようになっています。
人材費 | 50% |
材料費 | 20% |
経費 | 14% |
委託費 | 6% |
減価償却費 | 5% |
3-2.療養型病院コスト構造
療養型病院の医業収益に対するそれぞれのコストの割合は、次のようになっています。
人材費 | 60% |
材料費 | 10% |
経費 | 13% |
委託費 | 7% |
減価償却費 | 5% |
3-3.精神科病院コスト構造
精神科病院の医業収益に対するそれぞれのコストの割合は、次のようになっています。
人材費 | 60% |
材料費 | 10% |
経費 | 16% |
委託費 | 4% |
減価償却費 | 5% |
これら3つの病院形態において、人件費が医業収益の約50%から60%を占めており、病院経費の大半を人件費が占めていることが共通しています。
しかし前述の通り人件費を削減するのは最終手段として考え、その他40%〜50%のコストを削減対象にするようにしましょう。
4.病院経営で削減を検討すべき経費・コスト
前述の内容を踏まえ、病院経営で経費削減を検討すべきコストの項目は以下の3点です。
- 材料費
- 外部委託費
- 諸経費
詳しく解説していきます。
4-1.①材料費
病院の経費削減で重要なのは、医薬品や診療材料のコスト管理です。一括購入や長期契約を活用して、各種品目の仕入れコストを削減することが効果的です。
また、ジェネリック医薬品の導入拡大や卸売業者との価格交渉を通じて、経費を抑えることも可能です。
4-2.②外部委託費
外部委託のコスト削減には、サービス契約の詳細な見直しと業者の再選定が鍵を握ります。給食や清掃・セキュリティといった委託業務を対象に、提供条件やコストを見直し、より経済的な業者への切り替えを検討してください。
また、契約更新のタイミングを管理し、更新に合わせて契約内容を確認しておくようにしましょう。
4-3.③諸経費
諸経費の削減には、たとえば以下のようなコストの見直しが可能です。
- 電気料金削減のための省エネ型機器への置き換えや契約プランの見直し
- 通信費削減のためのデータプランの再検討
- 消耗品や備品の大量購入による単価下げ
これらの取り組みにより、病院運営における余分な経費を削減し、財務健全性を高めることができます。
5.病院の経費削減の方法や意識するポイント
病院の経費削減方法及び意識するポイントとして、以下の8点を解説していきます。
- 給食をはじめとした材料費の価格を交渉する
- 病院全体で医療機器をリストで管理する
- 外部委託費を見直す
- 光熱費や保険料を見直す
- 一過性ではなく継続的にコストを見直す
- 目的を明確にする
- 横断的なチームを作り取り組む
- 非正規職員の雇用促進を図る
病院の経営状況にあわせて、それぞれの内容を検討してみてください。
5-1.給食をはじめとした材料費の価格を交渉する
病院において給食材料費や医薬品などの材料費の価格交渉は、直接的な経費削減に寄与します。各種材料の供給業者と長期契約を結び、一括購入の際の割引率を高める交渉が有効です。
また給食では、地産地消を促進することで、新鮮でコスト効率の高い食材を調達し、給食の質とコストのバランスを改善することが期待されます。
5-2.病院全体で医療機器をリストで管理する
病院内の医療機器の管理を徹底することで、不要な重複投資を防ぎ、長期的なコスト削減が見込めます。
特に、使用頻度の低い機器の共有化や、レンタルサービスの利用拡大などは、初期投資やメンテナンスコストの削減につながり効果的です。
5-3.外部委託費を見直す
外部委託の見直しには、サービス内容の精査と業者の選定が重要です。給食や清掃などで結んでいる委託契約を見直すことで、経営改善を見込めるサービスプランを模索しましょう。
また価格だけを重視して交渉をするのではなく、品質維持を最優先に考えることも重要です。
5-4.光熱費や保険料を見直す
光熱費や保険料の見直しは、病院運営における固定費用の削減に直結します。エネルギーの消費効率を高めるための設備投資や、適正な保険内容への見直しをおこなうことで、無駄な出費を減らすことが可能です。
LED照明への全面的な切り替えや、保険契約の見直しにより、それぞれの費用を最適化しましょう。
5-5.一過性ではなく継続的にコストを見直す
病院経費の削減は、一時的な対策にとどまらず、継続的な取り組みが求められます。長期的に経費を管理し、定期的な見直しをおこなうことで、無駄な支出を最大限削減し、より効率的な運営が可能となります。
また、病院に勤務する全職員がコスト意識を持ち、日々の業務においても改善を図ることが重要です。
5-6.目的を明確にする
コスト削減を進める上で、目的を明確にすることが必要です。財務の健全化、資源の有効活用、医療サービスの質向上など、病院が目指すべき目標を設定します。これにより、職員全員が共通の目的に向かって努力でき、無理なく、持続可能な形でコスト削減に取り組めるようになります。
5-7.横断的なチームを作り取り組む
病院内で横断的なチームを形成し、各部門からの意見を集約することで、より広範な視点からのコスト削減策を実行しましょう。チームを作る際は、多くても各部門の代表者10名程度と小規模にすることで、チーム内での意思統一が可能です。
チームでは、各部門の現状と問題点を共有し、最適な解決策を探求します。これにより、部門間の情報の壁を取り払い、より効果的な経費削減が可能です。
5-8.非正規職員の雇用促進を図る
人件費の削減と効率的な人材管理を実現するためには、パートやアルバイトなど非正規職員の雇用促進が効果的です。特に、繁忙時や専門スキルが不要な業務に対して非正規職員を配置することで、人件費を抑制し、適材適所の人材配置を実現します。
また、病院運営の柔軟性が高まり、突発的な人員需要にも迅速に対応できるようになります。
6.給食部門の経費合理化のポイント
病院の経営で特に課題を抱えられているのは、給食部門を自前で運営している場合です。。基本的に経営陣は給食のプロフェッショナルであることは少ないため、従業員への丸投げがどうしても起きてしまい、全ての工程から収支までブラックボックス化しているケースが多いです。
そのため、以下2つの方法によって経費の合理化を検討しましょう。
6-1.給食部門のスタッフ高齢化への対応
病院の給食部門では、スタッフ高齢化への対応が急務となっています。給食部門のブラックボックス化には、熟練のスタッフが辞めてしまうことで調理プロセスが崩れ、安定した給食提供が難しくなっている点があげられます。
勿論多くの病院で職員の採用強化が進められていますが、業務のブラックボックスに伴い、若い人材が定着せず育たないケースがほぼ大半です。
そのため、業務形態のマニュアル化を促進し、属人化を避ける必要があります。
6-2.委託給食の活用
自前給食で長きにわたり運営をしてきた病院では、一部給食業務を委託する方向性を模索することも一つの手段です。たとえば、主食や主菜は自前製造で、複雑な個別対応食や療養食・副菜といったものは委託による完調品の導入を進めることで、注力するポイントと簡素化するポイントを明確化させることができます。
7.給食業経営総合研究所では病院の給食経費削減のお手伝いをさせていただきます
病院運営において、給食費は大きな経費の一つです。日本給食業経営総合研究所では、病院経営における給食費の見直しと削減のお手伝いをさせていただきます。
日本給食業経営総合研究所は「日本で唯一の給食業専門総合コンサルティング会社」として、さまざまな業種のお客様が給食に抱えているお悩みを解決してきました。
多くの経験と専門的な知見をもとに、食材の仕入れコスト削減からメニューの最適化、調理工程の効率化、委託先のご提案をさせていただきます。
病院給食の質を保ちつつ経費を削減したいとお考えあれば、ぜひ日本給食業経営総合研究所までお問い合わせください。
8.まとめ
いかがでしょうか。病院の経費削減では、主に材料費・外部委託費・諸経費を見直すと良いでしょう。
記事の中でご紹介したように、確かに人件費が占める割合は大きいですが、経費削減の最終手段として、まずはその他の分野から見直すようにしてください。
日本給食業経営総合研究所では、その経験と給食業界に専門特化しているという強みを活かして、あなたのビジネスを支援します。給食業務に関するお悩みをお持ちの方は、「日本唯一の」給食業専門総合コンサルティング会社である日本給食業経営総合研究所にぜひご相談ください。
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