株式会社日本給食業経営総合研究所、経営コンサルタントの井上裕基です。
未だ続くコロナ禍で混迷を極める状況ですが、給食業界も甚大な影響を受けた業態の一つです。しかし日給研の会員様・お付き合い先様の業況を見ていくと、前年対比の平均95%程度で推移しています。外食業の影響は、中食業界(特にデリバリー・テイクアウト)へもプラスの意味で起きていることは事実です。参入するプレイヤーが乱立したこともあり、改めて商品力が求められる時代となりました。同時にコロナ共存のライフスタイルに伴い、在宅需要や衛生面といった給食業へ求められるものも一層精度高くかつ明瞭になりました。今回は、給食会社が今後生き残るための方法論について、お話できればと思います。
給食会社が歩んでいる事業展開ストーリー
4月を終え、今期既に平均20円の値上げを完了させたという報告を受けています。また大半の給食業が、利益率向上へ向けて、配送の合理化や原価見直しといった経費削減へ着手されています。合わせて、コロナに影響を受けにくい新規事業を立ち上げた給食会社様も多く出てきました。それらをまとめると、下図のストーリーで展開されていることが分かります。
セントラルキッチンを持てる強みを再確認する
給食業はコロナの影響を受けたと同時に、食のインフラ業として「なくてはならない事業」であることを証明しました。それが他業界と比べても、前年対比95%前後の業況推移に表れています。特に業績を伸ばし、または影響が少なかったドメインの特徴は、①市場が大きいこと ②競合が少ないことであり、現在その筆頭が高齢者向け給食市場となっています。
保有資源を最大限活用し低投資で売上を獲る「高齢者向け個人宅配食」や「施設向けパック惣菜」で、弁当給食業を超すまでに成長させた会社も出てきています。市場が成長していることは、人口動態から想像できますが、競合状況は大手企業が存在すると同時に、網羅できないマーケットを地場給食業がだからこそ順応し獲得できる強みがあります。産業給食を柱としながらも、工場の非稼働時間に売上を付加できるチャンスは、まだまだあるのが実態です。
テーマは「保存性」×「日替わり」
医療介護業界の人材難やコスト問題は、今後も加速します。その中で給食業は、施設向けパック惣菜等で大きく貢献してきました。ただ需要は変化していきます。現在は、そもそも盛り付けすらしたくないといった更なる省人化のスタイルが求められています。ワンウェイ冷凍弁当や完調品を始めとした、院外調理のシステムがマッチします。作る機能の価値がより一層高まる中で、給食業は老若男女問わない世代のニーズに応える食品メーカーにいよいよなりました。今からでもまだ遅くはありません、着手の1年にしましょう。