株式会社日本給食業経営総合研究所(日給研)の副代表を務めております井上です。いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
現在もニュース等報道で注目を受けている給食業界ですが、給食業に専門特化した経営コンサルタントとして考えをまとめてみました。今回の給食業経営事情に関する報道を、給食業界にとってポジティブなことと受け取ること。給食業にとって『良い方向へ進む絶好のきっかけ』になると考え、日本給食業経営総合研究所は、以下の通りに考えています。
『食のインフラ』である誇りと責任を持とう
我々の周りには、いつも給食があります。幼稚園や保育園、学校で楽しみな給食の時間。仕事に励み、ランチタイムを彩る弁当や食堂。介護施設や病院、個人宅向けの配食等、老若男女を支えてきたのが我々が生業とする給食業です。
報道では、給食会社の経営悪化で突然給食が停止したことで、被害に遭われたお客様を多数拝見いたしました。驚きと疑問、同業者として憤りの声も耳にしています。その当事者が想像を絶する程に大変であったろうと推測しますが、同時に我々が担う役割とその影響の大きさを改めて痛感することにもなりました。改めて我々給食業は、止めることができない食のインフラなのです。そして今回の一件で、「ただ安ければ良い」といった消費者側の認識にも問題があるといった世間の声も増えました。つまり、我々給食業はしっかり利益を出さねばならないのです。
『ヘルスケア』を担っている自覚を持とう
消費者にとって、食べるものの選択肢が昔とは比べられない程増えました。
しかし時代の変遷を辿っても、給食は変わることなく人々のそばに在り続けます。それは一体何故なのでしょうか。
「老若男女食べる人それぞれにとって、生きるために必要かつ最適なお食事を毎日提供する役割があったから」だと私は確信しています。栄養バランスを整える身体的な健康と、美味しいと思える内面の健康=ヘルスケアを担う側面があったからこそ、給食業の変わることない価値を見出せたのです。
給食業界が今からすぐにすべきこと
1.価値を下げるようなことは止めていこう
これまでを否定するつもりはありません。これからは、給食業界が担う「役割と責任」を果たすための適正な値付けをしましょう。お客様の意識、エリア特性、他社状況の背景からすぐに変わるものでは当然ありません。しかし同じことを繰り返して、給食業界が成長する問題でもありません。今こそ皆でこの業界のスタンダードを変えましょう。
例えば、味噌汁/カレー/ふりかけ…無料のサービスは止めましょう。利益の出る弁当や食堂運営の値付け、契約内容なのか確認し改める努力を継続的にしましょう。
それが給食業のためであり、何よりもお客様へ果たす責任の一つに繋がるからです。
2.価値を上げることを増やしていこう
産業給食・事業所給食は、働く方々にとって必要不可欠なサービスです。値段が変わっても、この内容なら納得だと思われる商品開発をしていきましょう。
原価の兼ね合いから使える食材も限られるといった現実的な問題もありますが、コストは上がり続けるものとして経営していかなければなりません。給食業にとって、商品開発に目を向ける絶好の機会です。
毎日大量に・日替わりメニューを・低価格で提供できるプロフェッショナルが給食業です。これは他の業態には難しい、給食業特有の特徴です。介護施設・病院の経営課題を解決する完全調理済み食品事業や、高齢化社会の課題解決となる個人宅向け配食等、収益性に社会性高い事業の付加で、地域社会に一層必要とされる企業へと進化も可能です。いただけるありがとうの数が、従業員様のやりがいと幸福度も高めることでしょう。
日給研はこれからも、業界発展へ向けた惜しみない努力を誓います。