中小企業担当者の方で、社員食堂の導入を検討されている方は多いのではないでしょうか。社員食堂というと大企業だけにあるようなイメージですが、実は近年、社員食堂を導入する中小企業も増加傾向にあります。
そこでこの記事では、以下の内容を解説しています。
- 中小企業でも社員食堂の導入は可能なのか?
- 中小企業が社員食堂を導入するメリット・デメリット
- 社員食堂の導入時に検討すべきポイント
記事の後半では、「社員食堂の導入にはどうしても踏み切れない…」という担当者の方向けに代替案の解説もしているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.中小企業でも社員食堂の導入は可能なのか
まずは、中小企業でも社員食堂の導入が可能なのか、中小企業の定義とともに解説していきます。
1-1.そもそも中小企業の定義とは?
そもそも、中小企業は資本金や従業員数などで以下のように定義されています。
総務省及び経済産業省の発表によりますと、2021年時点で日本国内には「336.5万社」あり、日本国内の企業数において実に99.7%が中小企業です。
業種 | 「中小企業基本法」による中小企業の定義 |
製造業、建設業、その他の業種 | 資本金が3億円以下または従業員数が300人以下 |
卸売業 | 資本金が1億円以下または従業員数が100人以下 |
小売業 | 資本金が5,000万円以下または従業員数が50人以下 |
サービス業 | 資本金が5,000万円以下または従業員数が100人以下v |
参考:我が国の事業所・企業の経済活動の状況 ~令和3年経済センサス – 統計局
日本に存在する企業のほとんどが中小企業であるということがわかります。
1-2.中小企業でも社員食堂を導入できる
現在さまざまな中小企業から注目を集めているのが、社員食堂の導入です。結論、中小企業でも社員食堂を導入できます。
社員食堂というと大企業の広いオフィス内で設置されているようなイメージがありますが、最近では中小企業での導入事例が増えているのが現状です。
2.中小企業が社員食堂を導入するメリット
ここからは、中小企業が社員食堂を導入するメリットを「中小企業側」と「社員側」の2つの側面から解説していきます。
2-1.企業側のメリット
社員食堂を導入することによる中小企業側のメリットとしては、以下の4点が考えられます。
- 従業員の満足度が向上する
- 企業イメージが向上する
- 従業員の健康を管理できる
- 節税対策になる
それぞれ解説します。
2-1-1.従業員の満足度が向上する
社員食堂を導入することで、従業員が昼食に対して抱えている「昼食代が高い」「食事の栄養バランスが悪い」「休憩時間が足りない」といった悩みを解消でき、職場に対する満足度の向上につながります。
満足度の向上は離職率の低下に直結するため、重要なメリットといえます。
2-1-2.企業イメージが向上する
社員食堂は、企業の福利厚生に対する取り組みを象徴するものとして、外部に向けて企業イメージを向上させる効果があり、採用時の強みとなります。
結果として、優秀な人材の獲得や社員の定着率向上に貢献する可能性があるでしょう。
2-1-3.従業員の健康を管理できる
社員食堂によって、従業員に対し栄養バランスの良い食事を提供することが可能です。これにより、従業員は外食に頼ることなく、健康的な食生活を維持することができます。
従業員の健康維持は、企業の生産性向上に起因するため、長期的に見てもプラスの効果を見込めます。
2-1-4.節税対策になる
社員食堂の運営にかかる費用は、福利厚生費として会社の経費に計上できるため、法人税の節税効果が期待できます。また、提供される食事の費用は従業員にとって所得とは見なされず、所得税や社会保険料の節約にもつながります。
2-2.社員側のメリット
企業だけでなく、社員側にも以下のようなメリットがあります。
- 食費の負担が減る
- 外で食事をとる・準備する時間を短縮できる
- 社員同士のコミュニケーションの場になる
一つずつみていきましょう。
2-2-1.食費の負担が減る
従業員が社員食堂を利用することで、外食に比べて低価格で健康的な食事をとることが可能です。経済的な負担が軽減され、特に収入に制限のある従業員にとっては大きなメリットとなります。
2-2-2.外で食事をとる・準備する時間を短縮できる
社員食堂があれば、従業員は昼食のために職場を離れる必要がなくなり、休憩時間を有意義に過ごせるようになります。また、自宅で昼食の準備をしている従業員は、準備に割く時間も減り、ワークライフバランスが向上するでしょう。
2-2-3.社員同士のコミュニケーションの場になる
お昼時になると従業員が自然と社員食堂に集まるため、同じ会社のいろいろな人と交流を深められるようになります。仕事の話はもちろん、プライベートな話題についても話す機会が増え、職場内での関係性がより強固なものになるでしょう。
社員食堂の設置によって、チームワークの向上や職場の雰囲気を良くする効果が期待できます。
3.中小企業が社員食堂を導入するデメリット
一方で、中小企業の社員食堂導入には以下5つのデメリットも存在します。
- まとまったスペースが必要になる
- 導入コスト・ランニングコストがかかる
- 費用対効果が悪い
- 衛生管理が必要になる
- 混雑する時間帯がある
メリットだけでなくデメリットも把握しておきましょう。
3-1.まとまったスペースが必要になる
社員食堂を設けるには、一定の広さを持つスペースが必要です。特に中小企業では、利用する従業員の数に応じて、適切な広さのスペースを確保することが課題となります。
また、社員食堂の設置をするためにスペースを確保することで、普段働いているオフィスを圧迫することにもなり、就業環境が悪化する可能性がある点にも注意しなければなりません。
3-2.導入コスト・ランニングコストがかかる
社員食堂の設置には、設備投資や人材の確保などに伴う導入コストがかかります。さらに、日々の運営には食材の調達、調理スタッフの人件費、メンテナンス費用などが継続的に発生します。
これらのコストは、特に売上規模が小さい中小企業にとって大きな負担となることがあり、十分なリターンを得るための計画が必要です。
3-3.費用対効果が悪い
中小企業では従業員数が限られているため、社員食堂の利用者数が少なく、設置と運営のコストに見合った効果が得られない場合があります。
設備投資とランニングコストを考慮すると、投資回収期間が長くなりがちで、経済的な効果を感じにくい点がデメリットの一つです。
3-4.衛生管理が必要になる
社員食堂を運営する上で、衛生管理は非常に重要です。不適切な食品取り扱いが従業員の健康を損ねるリスクや、企業イメージの低下に直結するため、厳格な衛生基準と定期的なチェックが必須です。
衛生管理には専門的な知識と資源が必要とされ、継続的なコストと労力が伴います。
3-5.混雑する時間帯がある
昼食時には多くの従業員が同時に食堂を利用するため、特に小さなスペースでは混雑が避けられません。混雑を解消するためには、食事時間の段階的な設定や、迅速なサービスを提供するための工夫が求められます。また、混雑緩和策としてテイクアウトを可能にするのも一つの解決策となり得ます。
4.社員食堂の導入時に検討すべきポイント
社員食堂の導入時は、以下5つのポイントを十分に検討してください。
- 運営方式を決める
- 費用の負担について決める
- 利用者の決済方法を決める
- 供食の形態を決める
- 配膳・配食の仕方を決める
それぞれを計画的に決定できれば、社員食堂の導入〜運営まで滞りなく進められるようになります。
5つのポイントについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:社員食堂は導入すべき?社食導入のメリットや委託先給食会社の選び方
5.中小企業が社員食堂以外で取り入れやすい社食サービスもある
「社員食堂の導入はどうしてもハードルが高い…」という中小企業も多いかと思います。そんなとき、「社食サービス」であれば導入できる可能性もあるんです。
ここからは、社食サービスの概要をご紹介します。
5-1.代表的な社食サービスの種類
代表的な社食サービスは、以下の4種類です。
- 設置型社食
- クックサーブ・ビュッフェ形式の簡易社食
- 仕出し弁当・産業弁当(事業所給食)
- 食事補助券
- オフィスコンビニ
それぞれの特徴を解説します。
5-1-1.設置型社食
設置型社食は、中小企業のオフィス内に適度なスペースがあれば導入可能です。食品や飲料を自由に取ることができる冷蔵庫を設置し、業者によって定期的な補充がおこなわれるため、企業側の管理負担は少なくなります。
設備と食材の供給は業者が担うので、継続的な運用もスムーズです。中小企業にとって、少ないスペースで福利厚生を提供できるのが大きなメリットといえます。
5-1-2.クックサーブ・ビュッフェ形式の簡易社食
会社でビュッフェスタイルのランチを楽しむことができるサービスもあります。必要なのはわずかなスペースで、ビュッフェを提供する側が食器から食材まで全てを準備し、設置から後片付けまでおこないます。
毎日異なるメニューが提供され、500円程度という手頃な価格で、社員の満足度を高めるランチタイムを提供可能です。
関連記事:【クックチルとクックサーブ】両者のメリットやデメリット・違いとは?
5-1-3.仕出し弁当・産業弁当(事業所給食)
仕出し弁当や産業弁当は、企業に直接お弁当が届けられるサービスです。事前に必要食数を注文することで食品ロスを減らせるうえに、個々の好みに合わせたメニューを選べるため、従業員の満足度が高まります。
注文から支払いまでをオンラインで管理できる給食会社も増えてきているため、企業の管理負担も大幅に軽減されます。
5-1-4.食事補助券
食事補助券システムは、従業員に対して企業と提携した飲食店で利用できる券を提供するものです。
幅広い飲食店との提携により、多様な食事選択が可能であり、全従業員が好みに合わせて利用できる点が特長です。
5-1-5.オフィスコンビニ
オフィスコンビニは、名前のとおりオフィス内に設置する小規模なコンビニエンスストアです。24時間利用可能で、従業員は自分の必要なときに食品や飲料を購入できます。
運営に人件費がかからず、継続的なコストも抑えられるため、中小企業にとってコスト効率の良い福利厚生の選択肢となります。また、様々な商品を取り扱うことが可能で、従業員の多様なニーズに応えることが可能です。
5-2.社食サービスを取り入れるメリット
前述した社食サービスを取り入れることで生まれるメリットを2つご紹介します。
5-2-1.コストを抑えられる
社食サービスであれば、社員食堂よりも導入コストが安く、比較的導入をしやすいです。
また、運営に伴う人件費もほとんど発生せず、発注は従業員が利用する・もしくは利用した分だけをおこなえば良いため、ランニングコストが低い点も魅力です。
5-2-2.従業員の満足度向上につながる
社食サービスによって従業員が気軽に食料を購入できることにより、満足度が大きく向上します。
従業員の職場に対する満足度は、日々の生産性や働く士気の向上にもつながり、企業としての成果にも直結する大きなメリットとなるでしょう。
6.社員食堂や社食サービス導入時の注意点
最後に、中小企業が社員食堂や社食サービスを導入する際の注意点として以下の3点を把握しておきましょう。
- 必ず「全従業員」を対象にする
- 現金支給はしない
- 金額を定められた規定内に収める
それぞれ解説します。
6-1.必ず「全従業員」を対象にする
社員食堂の福利厚生は、必ず全従業員が利用できるようにする必要があります。これは労働者間の公平性を保ち、国によって定められた「同一労働同一賃金」の原則に沿うためです。
たとえば、アルバイトやパートタイマーも正社員と同様に社員食堂を利用できるようにすることが求められます。全従業員を対象にすることで、社内の満足度と結束力が向上し、離職率の低下にもつながります。
6-2.現金支給はしない
福利厚生として社員食堂を設ける場合、従業員に対する支給は現金ではなく実物提供にする必要があります。現金での支給は、福利厚生の趣旨に反し、税務上の課税対象となる可能性があるためです。
したがって、社員食堂や社食サービスといった具体的なサービスの提供が推奨されます。
6-3.金額を定められた規定内に収める
食事の福利厚生においては、国税庁が定める非課税の範囲内で提供する必要があります。これは食事代が一定額を超えた場合、その超過分が課税対象となるためです。
具体的には、従業員が食事に対して支払う金額が食事の実費の半分以上であること、そして非課税枠が月額3,500円を超えないことが条件となります。
上記のような決まりに注意しつつ、社員食堂や社食サービスの提供をおこなってください。
7.まとめ
結論としては、中小企業でも社員食堂を導入することは可能です。実際に、近年社員食堂を導入している中小企業の数が増えています。
中小企業が社員食堂を導入することで、従業員だけでなく企業にもメリットが豊富にあり、的確な運営をおこなうことで最終的な企業利益の向上を見込めるでしょう。
ただし、コストやスペースなどの関係で社員食堂の導入が難しい場合もありますよね。そんなときは、さらに手軽な「社食サービス」の活用もおすすめです。
食事の福利厚生を充実させ、従業員の満足度向上を図ってみてください。
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