いつもありがとうございます。給食業経営コンサルタントの井上裕基です。今回は、コロナ禍で進む給食業の事業承継とM&A事情についてお話していきます。コロナ前後関わらず、多くの給食業における事業承継はなかなか上手くいっておらず、残念ながら廃業を選択するケースも出ています。
黒字化経営でも廃業する背景は「後継者不足」
①給食業を継ぎたいと思う後継者がいない
②現場仕事に捕らわれまだまだ幹部が育っていない
③胸を張って継げる経営状態にない
④コロナ禍を闘うための経営に疲弊してしまった
といった多種多様なものがありますが、大半はこのあたりを占めています。日本では廃業している企業のうち、半数が黒字化経営であるといわれ、その廃業理由の多くが「後継者不在」といわれています。給食業においても、日給研会員企業を中心とした調査によると、既に後継者が定まっている企業は全体の 2割となり、その他の企業は承継について定まっていない状況で経営をされています。
さらに見ていくと、事業承継を検討するにあたり、課題と感じられる部分はやはり人の部分とお金の内容であることがわかります。さて事業承継には時間がかかります。東京商工リサーチのデータによると 3年以上かかるケースが約半数を占めています。
給食業は人材や承継で伸びるチャンスの『有望な業界』
しかしながら、後継者がいない、承継することは難しいというのは今に始まったことではなく、その準備をしてきたのか?といった自責で考える必要があります。給食業界は働きたい人・継ぎたいと思える人が多い状態にありません。そういった意味では発展途上と言え、市場や事業としては成熟している状況の中で、人材・承継といった部分ではまだまだ伸びるチャンスを持つ『有望な業界』です。
その中で、先ずやらねばならないことは、何よりも強く太い企業経営基盤なのは言うまでも有りません。継ぎたいと思える給食業にすることは、今後何をするにも選択肢が広く持てることとなります。事業承継・M&Aと聞くと、ネガティブなイメージになる経営者様もいらっしゃると思いますが、実態はそうではありません。更なる発展をするための方法論として、今後の自社をどうしていくかを改めて考える良い機会となります。
企業価値を高めることが承継・M&Aの第一歩
結論は、「企業価値を上げることは承継・M&Aの第一歩」ということです。昨今の事例の特徴を挙げると「セントラルキッチン」「高い保存性」がテーマです。
そこを更に分解していくと 2つのルール化ができます。例えば、委託給食会社がクックチルの完調品メーカーを引き受けるケースや、医療介護事業者がセントラルキッチンを持つ給食業を引き受けるケースです。委託給食で言えば、現地仕入れ・現地調理を行う事業者はコストメリットや安全安定性の担保は難しい状況の中で、セントラルキッチンや完調品を供給できる体制を整備できることで、これまでの課題をクリアできるようになります。勿論、新たな投資をするよりも、ノウハウや人材の流出防止にもなり、企業価値を高めることが可能となるわけです。
いずれの場合も、それぞれの課題を解決するためのシナジーを持つ、優れた方向性と意思決定であると考えます。そして何よりも成長市場への投資として、また一つ成長戦略を描ける材料を得たことになります。簡単なことではありませんが、コロナ禍を戦い抜く決意を強く感じています。
今後の給食経営に人材の課題からは一層目を背けることはできなくなりました。当然ながら、後継者が定まっているかそうでないかで、業況に影響が出ることは明確です。これからの人材の立場に立った時、「継ぎたいと思える会社か?」を熟考しながら事業を育てていく必要があるのです。
ここで一つご紹介ですが、埼玉県深谷市に本社を構える㈱ロワール様は、現社長へ 33歳で事業承継され、現在ではM&Aを経
て 2社の給食会社を経営されています。「闘う時間を長くとれることが早期事業承継の強み」として体現されたモデル給食会社の一つです。
三期連続で赤字であった給食会社を黒字化させ、現在ではグループで年商 12億円の地域一番店となられた事業承継のモデルとして、給食業界では注目を受けています。コロナ禍では先行きが見えないと気持ちが落ち込むこともありますが、足元をしっかりと固めること、そして業績を打開するための前向きな一手が打てるかどうか。結局のところ、自社の企業価値を上げることが、この先の選択肢を増やすチャンスとなるわけです。まずは一歩踏み出すこと、心より応援しております。
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