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【М&Aから見る給食業界】②М&Aが増加している背景

投稿者

高橋空

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最終更新日

事業継承・M&A

現在、食品業界のМ&Aの件数は非公表の案件を含めると年間300件~400件ほどと想定されており、20年前と比較をすると、その件数は倍増しているとみられる。食品業界では毎日のようにМ&Aが起きていることになり、給食業界においても例外ではない。その背景にはどのような要因があるのだろうか。今回は4つの視点からひも解いていきたい。

①後継者不在問題の解決

日本は超高齢化社会に突入し、経営者の平均年齢は60歳を超えている。経済産業省の発表によると、70歳以上の経営者が245万人、その半分の127万社が後継者未定であり、60万社が黒字廃業の危機にあるとされている。

東京商工リサーチが公表したレポートでは、後継者不足を起因とする「後継者難倒産件数」の2022年は『後継者難』倒産が422件(前年比10.7%増)で、3年連続で前年を上回ったとしている。このように年々増加する『後継者難』倒産の解消の手段として、М&Aが注目されているのが一つ目の背景である。

一方で、驚くべきことだが、日本政策金融公庫総合研究所の「経営者の引退と廃業に関するアンケート」によると、廃業した企業の90%が後継者を探さずに廃業しているという結果もある。M&Aという手段がより一般的になることで、М&Aの件数は今後も増加していくと想定される。

②先行き不安の解消

昨今の新型コロナウイルスの蔓延による生活様式の変化、ウクライナ情勢や円安に伴う原材料高騰など、ここ数年の食品業界を取り巻く経営環境は目まぐるしく変化をしている。

このような経営環境の変化は今に始まった話ではなく、2000年代のリーマンショック、2011年の東日本大震災、90年代にはバブル崩壊など、定期的に経営環境を変化させる事象が発生し、安定的な売上を維持していくことが難しい局面が連続的に起きている。

加えて最低賃金の上昇などに伴う人件費の上昇によって、生産性向上が余儀なくされている。そのため圧迫される機械投資・システム投資を積極的に行える企業は限定的であり、同じ売上高を維持出来たとしても、営業利益率は下がっていく極めて経営難易度の高い局面に立たされている企業が多いのではないだろうか。

ここで挙げた問題を自社だけで向き合うのではなく、M&Aで自社と違った強みを持つ企業と手を組むことで解決するという視点で実行されるオーナーも増えてきている。

③成長・ビジョン・夢の実現

会社を更に成長させていくことを一番の目的に、М&Aを決断する「成長戦略型M&A」も近年増えている。例えば、2022年9月1日に創業2期目を終えて間もない、フードデリバリーブランドのフランチャイズ事業を展開している株式会社バーチャルレストランは、株式会社USEN-NEXT HOLDINGSに全株式を取得したことを発表した。譲渡企業の代表者の牧本天増氏は当時、中央大学に通う現役大学生で、代表取締役は継続合意の上でM&Aを実行した。これにより現役大学生(現在は卒業済)が上場企業のグループ会社社長になるという極めてユニークな出来事となった。

牧本天増氏は、急拡大するニーズに対してベンチャー企業であるが故に、組織増強が追い付いていない面を考慮して、M&Aによる大手企業のグループに加わった。

株式会社USEN-NEXT HOLDINGSの傘下となることで、USENグループの顧客基盤と管理ノウハウを活用でき、飛躍的な成長基盤を整えるМ&Aとなった。

このように、後継者がいない・事業の先行きが不安など、どちらかというと後ろ向きな理由だけでなく、成長・ビジョン・夢の実現といった前向きな発想でのМ&Aが若手経営者に支持されるようになっている。

④オーナーの資産形成

相続税・贈与税を納付したり、シミュレーションをしたりする際の財産評価のための株価計算の方法は、国税庁の「財産評価基本通達」で定められている。相続対策で税理士に計算してもらうのは、この方式に基づいたものである。 この方式での株価の計算結果(税務株価)は、納税者の負担感が大きくなり過ぎないように配慮されており、M&Aにおける株価計算結果(企業価値評価額=M&A株価)と比較すると、低く計算されることが多いのが実態である。 つまり、一般的には税務株価<M&A株価、が成り立つケースが多くなるため、オーナーの資産形成においては有利に働くと言える。

仮に会社を清算したとしても、営業権が一切つかないうえに、清算に伴う諸費用や税金が発生するため、こちらも一般的には清算価値<M&A株価、が成り立つケースが多くなる。

更にМ&Aで会社を存続させることは、取引先や従業員との契約は原則そのまま維持するということになるため、関係者に迷惑をかけることなく第一線から退くことが出来るという点も利点である。

いずれにせよ、М&Aを実行することにより、第三者に迷惑をかけることなく、オーナーの資産形成を実現できるところもМ&Aが支持される理由と言える。

このようにМ&Aを決断する理由は、企業によって様々であり、М&Aの在り方が多様的になったことがМ&Aの件数を増加させている最大の背景と言えるだろう。

過去には身売り・乗っ取りという言葉が流布し、親族・従業員に承継出来なかったため、仕方なくМ&Aをする後ろ向きなイメージもあった。しかしながら現在では後継者候補がいても業界再編を乗り切り会社を更なる成長に導くため、М&Aを実行するといった前向きなイメージに好転した。

会社や全てのステークホルダーの10年後、20年後を考えるときには、М&Aという選択肢も視野に入れて経営と向き合っていただきたい。

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