介護施設や病院などの場所で提供される給食ですが、さまざまな調理方式があることをご存知ですか?また現場の方は、手間を抑えながら美味しい食事を提供したいとお考えの方も多いかと思います。
そこで注目されているのが、「クックチルシステム」という調理方式です。この記事では、以下の内容でクックチルについて徹底解説していきます。
- クックチルシステムの概要・その他の調理方式との違い
- クックチルシステムによる調理の流れ
- クックチルシステムを利用するメリット・デメリット
この記事を読むことで、クックチルについてのいろはを理解することができます。ぜひ最後までご覧ください。
1.クックチルシステムとは?
クックチルとは、調理後90分以内に中心温度を3℃以下まで急速冷却することで菌の繁殖を抑え、衛生的かつ美味しい食事を提供できる調理方法です。ルール通り調理・冷却が行われていれば、通常調理日を含めて5日間の保存が可能となっています。
食事を提供する際は湯煎やスチームコンベクション等を利用し再加熱し盛り付けのみおこなえば良いため、当日や調理場における作業の簡略化が可能です。また、必要な食事数に基づいた計画的な生産が可能なため、大量調理の現場でも数多く導入されています。
1-1.その他の調理方式との違い
クックチル以外にも、主に以下のような調理方式があります。
ニュークックチル | ニュークックチルは、従来のクックチル方式を発展させた調理システムです。 ニュークックチルでは冷却された状態の惣菜を盛付後、再加熱カートなどの機械で保管し、時間になったら再加熱を行って提供します。時間がある時に盛付を行うことができる点が他と異なる部分になります。 |
クックフリーズ | クックチルが調理後に急速冷却するのみなのに対し、クックフリーズは急速冷凍してから-18℃以下まで急速凍結します。 より冷やされた状態で保存されるため、約8週間の長期保存が可能です。 |
クックサーブ(従来調理) | クックサーブ(従来調理)は、現地で調理されたものをその場ですぐに提供する調理方式です。 できたての食事を提供できるメリットはあるものの、その他の調理方式よりも工程が多いため、ピークのタイミングでは多くの調理担当が必要です。 |
それぞれの調理方式では、調理のタイミングや保存方法に違いがあり、その分食事の提供にかかる時間や品質が変化します。
関連記事:クックチルとニュークックチルの違いとは?共通点もご紹介
1-2.クックチルシステムは従来の調理方式の課題を解決できる
クックチルは、従来の調理方式が抱える様々な課題を解決することができます。
まず、今までのやり方では、衛生面を担保するための「調理から2時間以内での喫食」が困難な施設・病院が多いです。喫食時間に合わせた食事完成に向けてのタイムスケジュール調整や、人員を厚く配置することが人不足社会において課題になるケースが多くありました。。クックチルでは、時間が確保出来るタイミングで調理した食品を急速冷却・低温保管することで、これらの課題を解決することが可能です。
また、大量調理が必要な病院や高齢者施設の給食における課題として、多様な形態・種類の食事への対応の難しさや調理担当者による味のばらつきが発生してしまうなどのお悩みがあります。
クックチルの導入には大きく2種類あります。
- 自社で空いた時間を活用しクックチルシステムを自社で導入する
- クックチルシステムを大規模に導入する給食・食品製造業に委託するケース
特に2の委託するケースでは、大量調理による味のばらつきを防ぎ、自社の調理工程も少なくできるため、これらの問題にも対処できるようになります。
クックチルは、様々な現場が抱える課題を解消し、効率的かつ安定的な食事提供を実現できるのが大きな特徴です。
関連記事:委託給食とは?メリット・デメリットや委託先の選び方6選を解説
2.クックチルシステムの調理手順とは?なぜ安全なの?
クックチルは、なぜ安全性が高い調理方式なのでしょうか。その理由は、調理工程にあります。クックチルでのおおまかな調理手順は以下の通りです。
1.加熱調理 | 食材を加熱し、調理をおこなう。 |
2.急速冷却 | 調理後30分以内に、食品を冷却機器で急速冷却し、中心温度を90分以内に3℃以下まで下げる。 |
3.低温保管 | 0〜3℃の低温で衛生的に保管する。(提供するタイミングまで、同じ温度帯で保管) |
4.提供前に再加熱し盛り付け | 提供前に再加熱し、盛り付けた状態で提供。(提供時は温かい状態で、美味しい食事を提供できる) |
クックチル製法の最大の特徴は、菌が発生しやすい温度帯を出来るだけ早く通過し冷却することで食品の安全性を高め、保管期間を長く保つことが可能になることです。
クックチルシステムを導入するにあたっては、上記のルールに則った製造が行えるようにスタッフを育成し、行程ごとの温度管理と記録が必要です。
前述の通り、クックチルシステムの導入には2種類あり、最近では1〜3までの専門性が求められる部分については外部に委託をし、4の行程のみ自社でおこなうケースが増えてきました。
これらの手順によって、食品の鮮度や安全性を維持しつつ、効率的な調理と提供が可能になります。
3.外部委託給食でクックチルシステムを利用するメリット・デメリット
ここからは、給食・食品製造業へ一部調理行程を委託し、クックチル製法で作られた調理済み惣菜を利用するメリットとデメリットについてご紹介していきます。
3-1.給食でクックチル製法で調理された惣菜を利用するメリット
クックチル惣菜を利用するメリットは、主に以下の4つです。
- 食品の衛生面が向上しHACCPにも対応できる
- フードロスの改善につながる
- 調理スタッフがいなくても食事を提供できる
- マニュアル化により常に同じ品質の食事を提供できる
一つずつ解説します。
3-1-1.食品の衛生面が向上しHACCPにも対応できる
クックチル製法で作られた食品は、定められた加熱温度や冷却方法、保存方法を確実に実践することで、細菌や微生物の繁殖を抑制することが可能です。
その惣菜を仕入れることによって自社での調理行程を大幅に削減することができます。
自社では再加熱と盛付に特化して提供をすることになるため、国際的に定められている「HACCP(ハサップ)」という衛生管理手法に対応した提供がよりしやすい環境になります。
HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。 |
特に、病院や介護施設などの給食では集団食中毒のリスクを最小限に抑えることが重要ですが、クックチルの活用によって課題解決に貢献します。
3-1-2.フードロスの改善につながる
施設で提供される給食で課題になっているのが、フードロスです。
当日の利用食数を予測し、自社で仕入れ・仕込み・調理を行うと、万全を期してある程度上振れするように用意する必要が出てきます。食材のロス・作りすぎた食事のロスなど廃棄が発生してしまうのです。
一方クックチル製法の惣菜を仕入れる場合は、必要となる食事数に基づいて注文ができるためフードロスの改善につながります。
食事の無駄な廃棄を抑えることで、食材費の削減につながるメリットも生まれます。
3-1-3.調理スタッフがいなくても食事を提供できる
クックチルでは、現場にて再加熱と盛り付けをおこなうのみで食事を提供できるため、調理専門のスタッフを必要としません。
また提供前の作業も簡単なため、ピーク時の対応力が高まり、迅速な食事提供が可能になります。
3-1-4.マニュアル化により常に同じ品質の食事を提供できる
クックチルは、常に同じ品質の食事を提供可能です。食事提供までの各工程がマニュアル化されていることで、調理担当者の技量によるばらつきがなくなり、提供する食事の品質が安定します。
3-2.給食でクックチルシステムを利用するデメリット
一方クックチルには、理解しておくべきデメリットもあります。主に以下の2点です。
- 保管場所を確保する必要がある
- メニューがマンネリ化する可能性がある
それぞれ解説します。
3-2-1.保管場所を確保する必要がある
クックチルを利用する際は、食事を保管する一定のスペース確保が必要不可欠です。冷蔵での保管が必要となるため、現状の冷蔵スペースで運用が可能かを事前にチェックしておきましょう。
最近では、冷蔵スペースが確保できない施設向けに冷蔵庫の貸出・レンタルを行う企業も増えてきたので、相談してみてください。
3-2-2.メニューがマンネリ化する可能性がある
クックチルでは、給食会社にて大量調理されるため、メニューが固定化したりサイクル化する可能性があります。またクックチルシステムでの調理では、揚げ物や炒め物のメニューが苦手という側面もあります。
クックチルの利用を考えているのであれば、食事のレパートリーがどれくらいあるのかも確認しておきましょう。
4.まとめ
クックチルとは、調理後90分以内に急速冷却することで菌の繁殖を抑え、保存期間を延ばすことが出来る調理方法です。食事を提供する給食の現場では再加熱と盛り付けのみおこなえばよく、作業が簡略化されるメリットがあります。
また、給食でクックチルを利用するにあたっては、保管場所の確保やメニューのマンネリ化といった注意点があることも把握しておきましょう。
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