いつもありがとうございます。日本給食業経営総合研究所 給食業経営コンサルタントの井上です。
本日は産業給食・事業所向けの弁当給食における顧客継続率、満足度アップについてお伝えしていきます。
弁当給食における食数減や顧客離脱はなぜ起きるのか?
過去コラムでも触れたことがありますが、弁当給食は時代や顧客需要とともに変化してきました。これまでの産業給食はいわゆる継続的な需要に甘んじて変化することに消極的なことが多く、多くの給食会社がコンビニエンスストアや飲食店の台頭によって大きく食数を落とす結果となりました。それではなぜ弁当給食における食数減や顧客の離脱は起きてしまうのでしょうか。このあたりの分析ができているかどうか、そしてその対策が打てているかで現在の給食会社の業績を左右していることは明らかです。
まず1つに、弁当給食世代⇒次世代に沿った変化に適応できていないことです。弁当給食を知らない、あまり馴染みのない世代は、コンビニ弁当や飲食店のランチが主流となり、イメージが持てていないケースがほとんどでした。自弁派(自分で弁当を作り持ってくる)も一定以上いるなかで、弁当給食がこれまでの業況で居続けられると想っていること自体誤りであり、変化できなかったことがここに来て結果として現れ始めているのです。具体的に言えば、日替わりである特徴以外はここ数十年何も変化することはなく、弁当自体の商品力やトレンドを掴み切れていないケースです。
次に問題なのは、弁当給食への飽きです。前述となりますが、日替わりである以外は単調なので、お客様が目新しいものに流れます。この代表例がまさにこれまでの弁当給食離れを引き起こすコンビニや飲食店の事例となります。給食会社として市場のトレンド把握から商品開発まで一貫したものを提供しない限りはこの波に飲まれてしまいます。
顧客数以上に必要な指標は顧客継続率とLTV
産業給食や事業所給食といった弁当売上は、顧客数や食数、単価といった指標で見ていくことが可能です。ただし、弁当給食において今後自社商圏の事業所数が倍増することはほぼ間違いなくないでしょう。また現在全国の弁当給食会社における1事業所あたり平均食数は4食程度と、大変厳しい状態を迎えています。初めから4食でのお届けであった顧客ではなく、当初は20食程度の食数が段々と減ってきており、かつ売値も据え置きのケースがとても多いです。重ねて1食でのお届けをしてしまっている給食会社もまだまだいると見受けられます。つまりそもそもの食数減少もありますが、1顧客とのお付き合いをどのようにして長続きさせていくかが重要になるわけです。この指標にLTV(Life Time Value)=生涯顧客価値があり、日本給食業経営総合研究所では、何よりも1顧客から得られる数字をしっかりと追っていく必要が有ると考えています。
継続率を高める施策を実行できているか
価格競争に陥り利益圧迫しているケースは価格適正化のテーマで触れていきたいと想いますが、市場も安定している弁当給食業においては差別化や継続率を高める施策は必須の段階となっています。差別化の1つ「商品力」については、下記コラムで執筆していますのでご覧いただければ幸いです。
前述のLTVを高めるためには、①顧客単価を上げる ②継続率を上げる ③利用頻度を上げる、これらがポイントとなります。
まず①については、事業所内の弁当給食シェアを高めていく必要があります。同僚紹介キャンペーンにはじまる1顧客あたりの売上高を伸ばすことが重要です。そしてこれは付随して配送経費率を下げ、効率を高めていく結果にもなります。
続いて②については、商品力の向上が一丁目一番地。内容を創意工夫・研究開発する時間を必ず設けることが必須となります。並行してポイントはロイヤリティを高めることも有効です。地方の給食会社様では、地場の企業とタイアップして弁当給食利用者へのクーポンや優待券といった特典戦略を進められています。弁当顧客としては、自社の弁当を利用することでのメリットをより感じられるようになり、提携企業としては、毎日の弁当顧客に対する広告宣伝にもなり、win-winの関係で事業を伸ばしていけるという背景です。
またSNSでの弁当写真アップを強化している給食業も増えてきています。毎日の弁当給食写真の公開により、ブランディングにも繋がる良い取り組みとして注目を受けています。
そして③については、伸びしろの有るKPIです。顧客の注文頻度を倍にすることで売り上げも倍、普段弁当を注文しない層を取り込めればその分伸ばすことが可能な点にぜひ注目いただきたいところです。これは既に多くの給食会社でも取り組まれていますが、自社の商品で取り込めていない層が何を喫食しているのか調査が重要となります。例えば1つ取り上げると、コンビニや飲食店・食堂利用者への訴求ポイントは「単品特化型」の商品開発でチャンスを得ることが可能となります。日替わり弁当の色々とバラエティを求める層にはこれまでアプローチしてこなかった分、伸びしろがあるわけです。
今回は弁当給食の業績アップ術についてお伝えしてきましたが、コロナ禍で撤退する弁当給食会社も増えてきている中で、ぜひいち早くそのシェアを獲りきっていただきたいと願っております。